テープ起こし(文字起こし)技術を習得するには? それ、手段が目的になっていませんか 

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今回はwannabe文字起こしワーカーにならないで、ガチで文字起こしで仕事をする、稼ぐための方法について考えます。
簡単にいうと『文字起こし(テープ起こし)の勉強法』です。

【2020/7追記 一部リライトしました。】
【2020/7追記2 ちなみに筆者の場合、練習らしい練習もしないまま、ダメもとで応募したランサーズの案件を運良く受注することになり、それが人生初の文字起こしでした。でも特に修正や苦情はなく、同じ方から次の案件をいただけました。こんな事例もあるということで。】

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wannabe文字起こしワーカーとは?

この話題を思い出したのは、先日、久しぶりにこちらのブログを拝見したことがきっかけでした。
医学翻訳ブログ

医学関連文書翻訳の対訳ソフトを作っている方のブログです。
翻訳の仕事をしようかと思っていた頃、きれいごとだけではない生々しい現実と意見がたくさん書かれたこのブログに、衝撃をうけつつもよい刺激を受けていました。
(ちなみにこちらの『イートモ』というソフト、実際の文書から抜き出して対訳が作られているので、翻訳のトレーニングにはかなり使えます。お礼も兼ねて宣伝。)

ワナビー翻訳者(医学英訳者)という存在

特に毎度心に刺さっていたのが、時折出てくる「ワナビー翻訳者(医学英訳者)」という言葉。
上のリンク先の記事にも出てきます 記事が削除されたようです。すみません。上記リンクはブログのトップページに飛びます。2018.12.25)
ワナビーとはwant to beのスラングのwannabeのこと。つまりワナビー翻訳者は翻訳業に就くことを志望する人という意味ですが…
wannabeには絶対にそれになれないという軽蔑的な意味が含まれるそうです。→参考

つまり
翻訳の勉強をすることが目的になっていて、いつまで経っても実務にたどり着けない、または仕事を得られない人」という意味で使われています。

 

この状況に陥る人は、翻訳に限らず、何か新しいことを習得するときには一定数いるような気が…(自戒も込めて)。

というわけで、ここは文字起こしの仕事のブログなので、wannabe文字起こしワーカーにならないための方法を、私なりに分析して、経験をもとに書いてみたいと思います。

なぜwannabeに陥ってしまうのか

まずこれを検証してみます。

仮説1:それを目指している自分に酔っている

「○○目指して勉強中!!昨日発見したかわいいこの子(注・文房具をこの子呼ばわり)と、今日もがんばっちゃお💗」とSNSに書きつつ「こんな私はイケてる!」と思っているパターン。

ここ10年ぐらいでSNSやら自己アピールの場が増え、それまでにもアピール欲を持っていた人はいたのでしょうが、それを表現して満たされる場所が増えたと思うんです。
成功体験や自信がない人の承認欲求とでもいいましょうか。
個人的には、そんなの自分だけが見る日記にでもこっそり書いておけばいいのでは、と思うのですが…まあ、ちまたの感覚とは、かなりずれているかもしれません。

で、例えばそういう人に「それで何をしたいの?」と聞いてみると
「まあ仕事にできたらいいかなあ~なんて」とか
「いつか役に立つかも」とか
「できるようになってから考える」という返事。

10年ちょっと前、まだSNSがあまり普及していなかった頃に私は大学生でして、口頭でいつもそういう承認欲求アピールをしてくる人がいたんですよ…ふと思い出してしまいました。

 

ここではっきり申し上げておきたいのは、この考え方を否定するわけではないということです。
ご本人がそれで幸せならば、目的のない手段をこなすことで自分に酔う、wannabeのままでいる毎日もありだと思います。勉強をするという行動そのもので自己肯定感を得る、という考え方で。ただ、仕事を目的にしているのにwannabeに陥ってしまう方は問題だな、と思っているのです。

 

ちなみに蛇足ですが、日々のタスクをこなすモチベーションとして、SNSを報告場所として使うのはいい使い方だなと。自分でやったことはないですが、例えばよく大学受験生とかで、承認欲求を満たすという目的なしに、SNSに報告することを強制力として頑張る人がいます。そういう使い方はいいなあと思います。

仮説2:その目的を果たさなくても、さほど困らない。急を要さない目的である

これは「目的があっての手段」の場合の仮説です。

例えば「何としてでも収入を得ないと当面の生活が立ち行かない」人が、生活の糧として翻訳なり文字起こしなり何らかの知識や能力を求めるのと
「なーんとなく毎日単調だし、○○ちゃんママも空いてる時間で働き始めたっていうし、まあ簡単にできそうなもので何かやってみようかしら~」という人が、上記と同様に知識や能力を求めるのとでは
意識の違いは明確だと思いませんか。

切羽詰まると、人間は目的を達成するための最短距離を考え始めます。
切羽詰まるような事態が人生において良いものかどうかは別にして。

仮説3:うまくいかない事態を極端に恐れている

これはwannabeでいることを望んでいない人の場合です。

さきの翻訳ブログのどこかの記事で
「医学翻訳をやるからといって、まずは基礎力!基本から!と言って英文法の本を頭からやってちんたら勉強している人」
というのがwannabeタイプと見なされているのですが。

こういう方の中には、本来あまり英語が得意ではないのになぜだか翻訳者を志してしまった方や
「医学翻訳文書をいきなり翻訳するとできなさすぎて絶望しそうで怖いから、まずはプチ達成感♪を積み重ねて、少しずつ、できることから、慎重に、だんだん、一つずつ、…(-_-)zzz…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

文字起こしも、学生時代の国語の成績がさほど良くなかったのに
「生まれてこの方毎日欠かさず日本語を使ってるから、こんな簡単な仕事できるもん!誰にでもできるってよく書いてるし!」
という方には、あまりおすすめしません。

というのは、本気で言葉を専門にして食べていこうという人たちがたくさんいる業界だからです。
上記のような考え方の場合、業界におけるアドバンテージはどこにあるのでしょうか。

本物に触れてみないとできるかどうかなんて分からない

私見で大変恐縮ですが、ある作業を仕事にしたい場合、本番の仕事の題材そのものに触れてみないと、その仕事が自分にできるかどうかが分かるわけがないと思います。
確かに、最初から本番の仕事の題材を仕事で求められる完成度に仕上げられることはほぼない。

それは百も承知で、
一方で少なくとも、仕事にできるレベルと今現在の自分のレベルの乖離具合(何が足りないからできないのか)ということが分かる状態にないと、その仕事ができるレベルに達する見込みは薄いのではと思います。

というわけで
仕事で求められるレベルを知り、それと今の能力の距離を測ること
その距離を縮めるためには何をすべきかを客観的に分析すること
ができる分野の仕事(ないし目標)を志すことをおすすめします。

本当に文字起こしの仕事をしたい人が研鑽する方法(個人的おすすめ)

とにかく文字起こし作業をやってみる:生きた会話に慣れ、語彙を増やす

個人的おすすめの1つ目はこれです。

泳げるようになりたければ、泳ぎ方の本を読むよりプールに入ろう

泳げるようになりたければ、泳ぎ方の解説本を読むのではなく、まずはプールに行って水に入ってみよう!という考え方に、あまり異論は出ないかと思います。

文字起こしも同じです。やってみないと、解説本を読むだけでは得られない「感覚」の部分が身に付きません。

プールもいいけれど、実際の仕事は海だと思ったほうがいい

何といっても文字起こしの素晴らしい点として、身の回りの音声すべてが練習に使えます。

テレビやラジオの音声でももちろんよいのですが、もし日常会話を録音させてくれる知り合いや家族がいれば、それが実戦に即した練習に一番ぴったりです!!
(ただし「今から録音するよ~」と宣言すると、意識してしまって不自然になってしまう人がいるかもしれないので、事前に伝えておいてこっそり録音スタートするなど、工夫してみてください)。

台本のない会話は、言いかけてやめたり、お互いに分かっている内容ならば「ほら、俺この間あれした時にさ」「私からすれば、あんまりそんな(ふうには思わない)。いや、分かんない」などと省略が多かったりして、そのままでは書き起こし原稿が意味不明になりそうな発言がたくさん出てきます。

しかも
話しているところに発言がかぶさったり
飲食店や屋外では周りの音が入って(食器がぶつかる音、携帯のバイブ音、「いらっしゃいませ~」「ありがとうございました~」の声、貧乏ゆすりの振動音、エアコンの作動音、踏切の警報音、などなどなど)発言が聞き取りにくくなったり
実際に仕事で聞く音源でよくある困難にぶち当たる(そして砕ける…)という経験もできます。
まさに、予測できない海の荒波にもまれて泳いでいるような感じ。

最初は教材などの聞きやす~いクリアな音声で練習するのもアリですが、仕事をする前にはぜひ、身近な雑音だらけの音声を起こしてみてください。本番の仕事で面食らうことが減るかもしれません。

 

書籍などきちんと校閲の入った正しい文章を読む:日本語能力の向上

実際に仕事をしてみると、純粋に聞き取ったままに書き起こす場合は案外と少なく、ケバを取ったり、ある程度日本語として正しく整えてくださいという場合が多いです(私の仕事においての実感で)。

正しい日本語に整えられるか。これは結局のところ「変な日本語に違和感を持てるかどうか」です。

い抜き、ら抜き、さ入れ、サ変動詞の「を」入れなどに違和感を持てるかどうか。
おかしな敬語に違和感を持ち、かつきちんと直せるかどうか。
似たような言葉の誤用に気づけるか。

例えば
「おっしゃられる」(→おっしゃる)
「やらさせていただく」(→やらせていただく)
「結果の取りまとめのほうのご担当をさせていただく」(→結果の取りまとめを担当させていただく)

などなど。

この辺りを正しく修正できるかどうかは
どれだけ今までの人生で正しい日本語を蓄積してきたか + 違和感 +検索能にかかっています。
出版社の校閲部署がきちんと校閲した文献・文書をたくさん読んで、たくさん自分の中に正しい日本語を蓄積してみてください。

 

校閲の甘いパンフレットや看板の間違いを見つける:校正・校閲力

街中にあるパンフレットや広告、看板、ちょっとした張り紙には、思いのほかたくさんの間違いがあります。
いつも間違いを見つけるつもりで読んでみてはいかがでしょうか。

筆者のおすすめは宝島社VOW

手っ取り早く、楽しく、まとめて間違い文章を読むには宝島社のVOWシリーズを勧めます。お遊び本と思われがちですが、私は結構使えるんじゃないかと思っております…(下ネタが混じりがちなので、嫌いな方にはおすすめしませんが)。いかがでしょうか。
解説を読む前にどこが違っているのか、ちゃんと間違いを見つけて笑えるか、という感じで使うと楽しく校正力が上がる気がします。

校正と校閲の違い

校正は(本来は原稿と校正刷を見比べて)字面の間違いを見つけること(完壁→完璧、など)
校閲は、事実に反していないかまでを含めて検証することです。
校閲の例)北海道ネタですが
「こくてつしべつせん」と言った場合、北海道には「士別」と「標津」がありますが、「国鉄標津線」しか存在しません。
「えさしちょうでイカ刺し祭りが開かれ…」と言った場合、北海道には「江差町」と「枝幸町」がありますが、イカ刺し祭りで検索すると「江差町」と確定できます。枝幸町はオホーツク海側の毛ガニの街です。

やっぱり、いろいろなことを幅広く知らないと(or 検索して正しい情報を得られる能力がないと)
文字起こしの仕事はできないんです。

この校閲も含めて、文字起こしの仕事と言えましょう。

(内容の校閲は求められない場合も多くありますが、漢字の書き分けは最低限必要な検索です。
内容についても、気付いた場合には連絡事項欄で念のため疑問出ししたいものです)

筆者の場合

正しい日本語を身につけるという点では、分からないことが出てくれば調べるようにしていますが、学生時代は国語が一番の得意科目だったこともあり、日常で使われている漢字を知らない、間違えるということはあまりないので、これに関して特別な意識をもっての研鑽はしていません。

そして幼少時から、看板や宣伝文句の活字が大好き。活字ならば何でも、商品の裏も取説も、果ては牛乳パックの隅に書いてあるパックの製造元まで、ついうっかり読んでしまいます。これはたぶん一生継続する癖です。

語彙を広げるにはテレビがいい 欲していない情報が勝手に流れてくるから

語彙を広げるという点では、暇な時にテレビを見るようにしています。
というのも、ネットだと自分から選んで求めた情報が多くなりがちですが、テレビは欲していない情報が勝手に流れてくるので、知らない業界の知らない言葉を知るのに役立つからです。
例えば私の場合、趣味とは無縁な、釣り番組や将棋番組、スポーツ番組(先日ボルダリング世界大会の中継を見たら、知らない専門用語がたくさんで面白かったです)などを意識してつけておくようにしています。

年代の違う人の会話に耳をそばだてる

私の場合、特にランサーズで受注する案件は「バズる」「RTされる」「マジ卍(まんじ)」など、記者ハンドブックに絶対に載っていないような口語がたくさん出てくるので、自分とは年齢も生活の場も違う人の生きた会話をいつも聞いておくことが、私にとっての一番の文字起こし技術研鑽方法だと感じています。

あまり他人の人生に野次馬根性を持たないたちなので、内容はどうでもいいのですが、喫茶店や電車などで他の人がどんな言葉を使っているかには、常に興味津々です。

ところで、ちまたの文字起こし講座はどうなのか

受講したことがないので、内容うんぬんについてはコメントできないのですが…

ランサーズではアピールポイントになっていないような気がする

ランサーズなどで文字起こしカテゴリに登録していて、登録から数ヶ月経っても仕事が受注できていない人のプロフィールを拝見しますと、「○○社 文字起こし講座修了」と書いてあることが少なからずあります。
それでも、その人は受注できていないのです。つまりここから推測するに、クラウドソーシングサイトにおいて仕事をしたいと思えば、これはあまりアピールポイントにはならないようです

修了して仕事を必ず紹介してくれる講座ならばまだしも、もし修了したという事実しか残らない講座なら、修了するのが目的、目的達成!で(結果的に)終わってしまっていませんか。

資格を取って一安心、では仕事に結びつかない

技術を身につけて仕事をして稼ぐのが目的であれば、
自分の能力を客観的に分析するために文字起こしの能力試験を受けたり
実務に求められるレベルを身をもって知るために、文字起こし会社のトライアルを受けたり
したほうが、残された人生の時間を仕事により多く当てることができて、有効に使える気がするのですが…

お節介と感じた方がいらっしゃいましたら、いち意見として受け流しておいてください。

文字起こしの仕事に必要な能力まとめ

文字起こしに必要なのは

★正しい日本語の知識(文法、表記)
★現代の生きた会話で使われている言葉の知識(新しい言葉、本来なかった使い方)
★語彙力(知らない言葉は聞き取れない)
★校正・校閲力(間違った表記を正しく直せる、物理的にあり得ない事実に気づける)
(+α タイピング速度)

この中で自分に足りないものを客観的に分析して、補完する。

文字起こしはハマると本当にとても楽しい仕事なので、ハマる人が増えることを願ってこの記事をおわります。
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