私事ですが、2018年分の確定申告(2019年3月締め切り分)が個人事業主として初めての確定申告でございました。
夫の確定申告書はかれこれ5回作ったことがあり、確定申告のざっくりしたイメージはありましたが、個人事業主かつ青色申告というのは今回が初めて。
青色申告会の講習会に行ってみたり、1月上旬に税理士会の個別無料相談に行ってみたりと、結構調べてもがいてどうにか申告を済ませたという感じです。
来年の自分への備忘録も兼ねて、そしてどなたかのお役に立てるかもしれないという希望も込めて、
・文字起こしワーカーがするであろう複式簿記の仕訳一覧
(↑青色申告が発生主義であることに伴う、年をまたぐ前払いと後払いの面倒くさい仕訳も含む)
を書いてみます。
私は税金の専門家ではないので、あくまで自分の確定申告に困らないように調べた内容を書き記した程度のものであるということをご承知おきください。
まず大前提として
個人事業主の基本的考え方として、個人である私と、事業主である私は別と考えます。
(なので、事業用の口座や事業用のクレカを別に作っておいたほうが話が分かりやすいことが多い気がします。)
例えば
事業主である私が、個人である私のお金で事業に使う物を買ったら、個人の私からお金をもらった(帳簿上は借りたと見なす)ことになります。
事業主である私が、稼いだお金を個人である私の口座に貯金したら、個人の私にお金を渡した(帳簿上は貸したと見なす)ことになります。
そして、青色申告だの複式簿記だのといったものは、事業主である私の持ち金(現金も口座も含む)の動きを記録しておくためのものです。
個人である私のお金で、個人である私のために使う物を買った場合、事業主である私は一切関与しないので、このお金の動きは記録する必要はありません。
もう1つ大事なこととして
仕訳の根拠になった領収書や仕事の記録は5年間の保存義務
収入金額や必要経費を記載した帳簿は7年間の保存義務があります。
宛名のある領収書でなくとも、「誰とどこで会うために○○線を使った」「喫茶○○で仕事の打ち合わせを△△さんとした」などという記録でも十分らしいです。
もちろんお店のレシートでも。ただ感熱紙のレシートは文字が消えてしまうので、文字印刷面を内側にして折っておくようにと青色申告会の講師の方が言っていました。
私はこの領収書ファイルを使っています。
キングジム 領収書ファイル A4 1/3 2380H ライトグレー
文字起こしワーカーがするであろう複式簿記の仕訳一覧
私はMoney Forwardクラウド会計・確定申告というソフトを使って帳簿をつけています。
このソフトには仕訳辞書という機能があり、日頃発生する仕訳について登録しておけばいちいち勘定科目を選択しなくてもよいのです。←同じ内容は同じ勘定科目で仕訳する必要があるので、間違いのリスクは減らしたい
というわけで、以下に私が登録している仕訳辞書の内容を示します。
一応税理士さんの無料相談で仕訳が正しいか見てもらいましたが、参考にされる際はご自身でも裏付けを取ってから使ってください。
クラウドソーシングサイトで仕事をしたとき
仕事が決まった日の日付で仕訳します。納品した日や検収された日ではありません(発生主義)。
税込・システム利用手数料込報酬が5000円で、システム利用手数料が2割の場合の仕訳はこうなります。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
売掛金 | 4000 | 売上高 | 5000 | ランサーズ ○○様文字起こし報酬 |
システム利用手数料 | 1000 |
注1:システム利用手数料という勘定科目はおそらくデフォルトでは入っていないので、自分で設定する必要があります。MFクラウドの場合は各種設定→勘定科目→通常入力用→貸借対照表→事業主貸の補助科目に「システム利用手数料」と設定します。
注2:システム利用手数料を雑費とする仕訳もネット上には出回っていますが、税理士無料相談で聞いたところ、青色申告決算書の損益計算書のところに雑費があまりに多いと問い合わせが来る可能性があるそうです。
そのため、システム利用手数料と(下記の)振込手数料は雑費とせず、損益計算書の勘定科目に設定したほうがいいと言われました。
MFクラウドでは各種設定→勘定科目→通常入力用→損益計算書で、画面下の決算書科目追加・勘定科目追加のところから設定できます。
クラウドソーシングサイトの報酬を口座に払い出したとき
実際に口座に入金があった日に仕訳します(つまり通帳の日付と一致する)。
振込手数料500円が差し引かれて振り込まれる場合の仕訳はこうなります。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
普通預金 | 19500 | 売掛金 | 20000 | ランサーズより口座に報酬払い出し |
振込手数料 | 500 |
上記2つの仕訳がセットです。仕事をした日と報酬が手元に来る日が同一ならば仕訳は1度で済む(借方普通預金/貸方売上高)のですが、そこにタイムラグがあることを帳簿上に表すために『売掛金』という勘定科目を仲立ちにして2回の仕訳が必要らしいです。「もらえることは決まったけどまだ手元に来ていないお金」です。
テープ起こし会社の仕事を受けたとき
こちらもランサーズの場合と同じで、仕事が決まった日に仕訳します。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
売掛金 | 5000 | 売上高 | 5000 | ☆社 00分 000円/分 |
テープ起こし会社の報酬が口座に振り込まれたとき(源泉徴収あり)
仕訳は振り込まれた日付で行います。
私の契約している会社は、源泉徴収税と振込手数料を差し引いた金額が振り込まれるので、このような仕訳になります。
借方勘定科目 | 借方補助科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 | |
普通預金 | 6370 | 売掛金 | 7695 | ☆社 ●月分報酬 | ||
事業主貸 | 源泉所得税 | 785 | ||||
振込手数料 | 540 |
源泉所得税は事業主貸とする方法と仮払税金とする方法があるようで、それによって4月以降に税金が還付された場合の仕訳も違うようです。
還付時の具体的な仕訳は
・事業主貸で仕訳していて、還付先の口座が事業用の場合は事業主借で
・事業主貸で仕訳したけれども、還付先の口座がプライベート用である場合は何もしなくて良い
・仮払税金で仕訳した場合は仮払税金を打ち消す(先ほどの売掛金と同様の)仕訳をする
ということらしいです。↓このページが詳しいのでおすすめです。
参考:https://www.zeiri4.com/c_1032/c_1035/h_561/
個人のクレカで、事業に使う物を買ったとき
1000円の本を個人用クレジットカードで買った場合の、買った日の仕訳です。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
新聞図書費 | 1000 | 事業主借 | 1000 | ○○にて△△、□□購入 個人用クレカ |
後日やってくる個人のクレカの引き落とし日には、帳簿記載不要です。そこは個人のお金の動きなので記録する必要はないということらしいです。
事業用のクレカで、事業に使う物を買ったとき
1000円の本を事業用クレジットカードで買った場合の、買った日の仕訳です。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
新聞図書費 | 1000 | 未払金 | 1000 | ○○にて△△、□□購入 |
これが引き落とされる日の仕訳は以下の通りです。
事業用のクレカの引き落とし日
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
未払金 | 1000 | 普通預金 | 1000 | A月B日 ○○にて△△、□□購入分クレカ引き落とし |
これで『未払金』という勘定科目が打ち消されました。
家事按分その1 電気代の検針があった日
自宅を仕事場にしている場合、家賃や電気代、通信費を事業の経費として算定できます。
経費として算入できる=収入から控除できる金額が増える=所得金額が減る=課税対象金額が減る=払うべき所得税が減るということです。
按分割合は面積や使用時間などから割り出すことが多いようです。
按分できる項目については、パソコンを使っての仕事の場合、家賃、電気代、通信費ぐらいらしいです。
水道代はよほど水を使う仕事でないと難しいらしいと聞いたので、私は按分対象にしていません。
さて、ある月の電気検針票が届いた日の仕訳で
電気代が10000円、事業按分割合を10%とした場合の仕訳は以下の通りです。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
水道光熱費 | 1000 | 事業主借 | 1000 | 電気代 A月B日~C月D日分 事業按分比率10% |
注1:実際には夫の名義の口座からの支払いなのですが、家計を同一にしていれば夫婦は同一の財布とみなされ、按分対象にして良いと税理士さんに聞きました(とはいえ、最終的な判断をするのは税務署なのですが)。
そのため、私は事業主借を使って上記のような仕訳(自分が借りているような書き方)にしていますが、
ご自身名義の個人口座からこれらの費用を支払われている場合には、事業主貸/水道光熱費として個人が使った分の金額を記載する(自分が個人に貸しているような書き方)をするようです。
家事按分で検索すると仕訳がいろいろ出てくるので、詳しくは調べてみてください。
参考:https://biz-owner.net/keihi/anbun
家事按分その2 家賃を払った日
15万円の家賃、事業按分比率10%の場合の仕訳は以下の通りです。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
地代家賃 | 1500 | 事業主借 | 1500 | 家賃●月分 事業按分比率10% |
以下、○○費の場合は借方勘定科目が「○○費」に変わるだけです。
家事按分 年越し編
私の家の場合、
・家賃は次月分を前月末までに支払う
・インターネット代はその月の分の請求が26日付けでくる
・電気代はX月半ばの検針日~X+1月半ばの検針日前日分が、X+1月の検針日付けで金額確定になる
という大変ややこしいことになっております。
普段は意識せずとも帳簿にただ書いておけばよいのですが、個人事業主の決算日が年末のため、12月~1月にかけての仕訳に一工夫が必要でした。
それを備忘録も兼ねて以下に記載します。
(一応、税理士さんの無料相談で合っていることを確認してもらった内容ですが、ご利用の際はご自身でも裏付けをお取りください。)
家賃:次月分を前月末までに支払う場合
3回仕訳します。
まず、1月分の家賃を支払った日(12月のいつか)にいつも通り仕訳します。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
地代家賃 | 1500 | 事業主借 | 1500 | 家賃1月分 事業按分比率10% |
12月31日に「これは来年の1月に使うお金で、払ったけどまだ使っていない分だよ」という仕分けをします。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
前払金 | 1500 | 地代家賃 | 1500 | 家賃1月分 事業按分比率10% |
1月1日に「去年払ったけど今年使うお金だよ」という仕分けをします。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
地代家賃 | 1500 | 前払金 | 1500 | 家賃1月分 事業按分比率10% |
これで、トータルで見れば地代家賃/事業主借という仕訳(普段の月の家賃仕訳と同じ)が残ります。
前払金を仲立ちとして仕訳するという話でした。
電気代:検針日に確定した料金のうち、半分は12月、半分は1月分である場合の仕訳
2回仕訳します。
例えば、12/14~1/13までの電気料金が1/14の検針票に記載され、金額が確定しました。
検針票の電気料金が15000円で、事業按分比率10%の場合、事業按分分は1500円
さらに、全期間31日分のうち18日分が12月分であることを考慮して
1500×18/31≒870円が12月分の電気料金(事業按分分)です。
つまりこの場合、1/14に検針票が届いた時点で12月31日にさかのぼり、「電気は使ったけど、その分の電気代はまだ払っていないよ」という仕訳をします。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
水道光熱費 | 870 | 未払金 | 870 | 電気代 12月14日~12月31日分 事業按分比率10% |
そして1月の検針票が届いた日(1/14)に「先月使った分と今月使った分をここで払うよ」という仕訳をします。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
水道光熱費 | 630 | 事業主借 | 1500 | 電気代 12月14日~1月14日分 事業按分比率10% |
未払金 | 870 |
これで、水道光熱費870+630=1500/事業主借1500という仕訳(普段の電気代の仕訳と同じ)が残ります。
「未払金」を仲立ちとして仕訳するという話でした。
他の仕訳の方法もたくさんあります
私がやっている仕訳の方法を書き連ねてまいりましたが、これが一般的なのかどうかは分かりません。
特に按分については年末に一括で按分する方法もあるらしく、
また年会費など1年に1度前払いするようなものについても、
本来は月ごとに割って各月で計上する(月ごとの利益が分かりやすくなるが面倒くさい)が、
前払いが1年間分ならば払った時に1度仕訳すればいいという特例もある(月ごとの利益を算出したい場合やりづらいが仕訳の手間は少ない)
などなどなどなど…実にさまざまな仕訳方法があるようです。
ただ、税務の専門家になるわけでない限り、全ての方法を理解する必要はありません。
最低限、自分の事業で必要な仕訳を覚えればいいだけの話なのです。
私が出席した某青色申告会の帳簿付け講習会では「普通は1カ月、長い人でも3カ月帳簿を付ければ、その人の事業に必要な仕訳は一通り出てくるので、そこで覚えてしまえばあとは繰り返しばかりですよ」と言っていました。私も実際にやってみてその通りだと思います。
というか、繰り返しにならないと(=同じお金の動きは同じ勘定科目で仕訳をし続けないと)まずいので笑。
この記事では、複式簿記の帳簿付けを行い、青色申告を遂行できる方法がどこかにまとめて書いてあったら、どなたかの役に立つのではと思って書いてみた次第です。
取りあえずこの仕訳で1年間のお金の動きを記録し続け、確定申告が迫ったらまたその時に考える、ぐらいでうまくいきます。たぶん。
特に、文字起こしのような仕入や在庫のない仕事は、帳簿がかなりシンプルでやりやすいほうらしいです。
身構えてしまいがちですが、実は何も特別なことではなく…そこら中の個人商店や小さな飲食店を経営している方は皆やっているわけですし。
青色申告のハードルが下がれば幸いです。
帳簿付けソフトは何を使うか
私が参加した某青色申告会の帳簿付け講習会で推していた…というか、帳簿付け指導で使用していると言っていたソフトは弥生でした。
私個人はMoney Forward確定申告ユーザーなので使ったことはないのですが、一番シンプルでわかりやすいとのことでした。
あとはfreeeを推している個人事業主の方も結構いるみたいです。が、こちらも私は使ったことがありません…。
愛用中のMoney Forwardクラウドは、個人的には非常にお堅いイメージで、少々インターフェースが使いづらい気もしていますが、今のところひとまず困ることなく利用できています。
公式サイトにいろいろな設定方法も書いてあるので、それを読めばまあまあ何とかなります(汗)。
青色申告会の方も、特別に優れた会計ソフトも使いづらい会計ソフトもないとおっしゃっていたので、これは本当に個人の好みで選ばれればいいと思います。
もし違いがあるとすれば…私は銀行口座やクラウドソーシングサイトとの連携機能は使っていないため分からないのですが(手動のほうが確実な気がして)、提携先の幅の広さやその辺の利便性に違いがあるのかもしれません。
あとは年会費と仕訳可能数の違いですかね?? あまり詳しくなくすみません。
開業費をどこまで入れるか、開業費とパソコンの減価償却についてなどなど、青色申告については結構悩んだ事項があったので、またそのうち記事にしたいと思います。
おわり。
★開業届と、所得税の青色申告承認申請書を出したときの記事は→こちら