文字起こしの仕事を1年間やってみたら色々分かりました

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私事ではございますが、昨年(2018年)3月に初めて文字起こしの仕事をしてから、約1年がたちました。

1年前の自分は知らなかった経験と知識の蓄積を、ここに書いてみたいと思います。

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分かったこと1 閑散期と繁忙期の差が激しい

なぜか10月が忙しかった

振り返ってみると一番働いたのは10月でした。文字起こし会社とランサーズの両方からひっきりなしに仕事がやってきて、納品のめどが立つとすぐに次の仕事が…という日々でした。カレンダーを見返してみると、全く何もしなかった日は2日ぐらいしかなかったようです。11月は少々燃え尽きて過ごしました笑。
その後の年末~年度末までは繁忙期と聞いていましたが、実際に過ごしてみると、確かに文字起こし需要が高まっているのだろうなという印象がある一方で、ある程度ばらけるのか、10月ほどの殺到具合ではないと思います。

時間のやりくりがうまくなったのも影響しているかも

あとは、10月よりも今の年度末時期のほうが時間のやりくりがうまくできるようになったということも、感覚の差の要因として大きいかもしれません。
あの頃はまだ作業の手際が悪い部分があったため、手元に仕事がある時にはほぼ起きている時間の全てを仕事に当てていました。
作業フローが改善されたことで文字起こし以外の時間との兼ね合いに余裕を持つことができ、違うことをする時間を増やせたので、感覚的に余裕を持てた気がします。

夏はやはりあまり仕事がない

6月はたっぷり帰省して仕事をしなかったのですが、その他の月でも夏はさほど忙しくなかった印象で、
季節ものの仕事(学会発表、会議など)が減り、時期を問わない仕事(インタビューなど)のみコンスタントにあったという感じです。

分かったこと2 書き起こし1回目、一通り最後まで通すのが最も大変

あくまで私の場合ですが、最初に一通り最後まで書き起こすのに、エネルギーと時間と集中力を最も費やします。
その後の聞き直しは、外出した日の夜で多少疲れていても、大概思った通りに進めることができます。

そのため、手元にいくつか仕事がある場合
午前中~14時ぐらいまでを一通りの書き起こし作業に当て
夕方からは聞き直しや事務作業などをすることが多いです。

自分に合った時間の割り振りを知ることができたのが、1年の経験による収穫です。

分かったこと3 文字起こしは登山に似ている

人によって「地味」と捉えられがちなところが似ている

時々「山を登るのが趣味の人って、地味すぎて飽きないのかな?ただ歩いて登って下りてくるだけなのに」などという人がいます。
文字起こしに対しても「ただ聞いた言葉を書き起こすなんて、随分地味な作業だけど面白いのかな?」という人がいます。

実は私も文字起こしの仕事を始める前には「1回や2回やるには面白いけれど、そのうちに飽きてしまうのではないか? または仕事そのものを嫌いになってしまわないか? どのぐらい続けられるだろうか?」と心配していました。
確かに、ものすごく長大なファイルの上に音が聞き取りづらく、知らない専門用語もたっぷりの案件では
「こんなに疲れたのにまだ30分しか起こせていない!!締め切りに間に合うか…どうしよう??」
「もうこの話は聞くのがつらい。聞きたくない。。。」となることがあります。

地味の後にある達成感も似ている

でも
一通り書き起こして聞き直しをして、細かいところを確認して原稿を完成品に仕上げたときの達成感
1回目で聞こえなかった言葉が聞き直しで難なく聞き取れ、知っている言葉が増えていく満足感とわくわく感
納品後に「またお願いします」と言っていただいたときの自己肯定感

私の仕事の原動力は、仕事が完成したときに得られるこの感覚です。
これがあるから、次もまた最後には楽しめる。
途中に、マイクから遠い発言だらけの難所が待ち構えていても
いきなり雑音の雨が降ってきて心折れそうになっても
(↑もちろんそんな難所はないに越したことはありませんが…)最後までやりきれます。

その他もいろいろと似ている

・途中にどんな道を通るか、難しいところはどこか(崖や沢、強風、霧が出やすいなど)ということが分かっていれば、2度目にその道をたどるときは少し楽になる、という点
・歩く(文字起こしにおいては「書き起こす」)という行動はいつも同じでも、攻略ポイントや作戦の立て方は毎度異なる、という点
・終わったときの達成感(登頂したときと納品したとき)が得られる点
・途中の景色を楽しむ(文字起こしにおいては音源の内容を楽しむ)ことができる点

など、登山と文字起こしには似ている点が多い気がするのですが、いかがでしょうか。
私は体力がなさ過ぎて登山とは縁遠い人間ですが「登山が趣味の方もこういう部分が好きなのかもしれないなあ…(-ω-)」と全く畑違いの人たちに思いをはせながら、今日も文字起こしをやっています。

分かったこと4 文字起こしの仕事に必要な力

文字起こしの仕事に興味のある方がお読みになっていると思いますが
文字起こしの仕事に必要な能力は何だとお考えでしょうか。
または、自分を売り込むとき(クラウドソーシングサイトのプロフィール欄、提案文、文字起こし会社の応募書類など)に、何が得意だと書いていらっしゃいますか。

意外に速読できると役に立つ

もちろん、ブラインドタッチである程度の早さで入力できる、ミスタッチが少ない(ATOKの機能などもうまく使う)、知っている言葉が豊富である、絶対に納期に遅れないなど、必須の能力はたくさんありますが。
これらは割と「あったら強み」というよりは「ないと困る」系のスキルだと思います。

私が1年間仕事をしてみて、必要だと感じた能力は「速読力」です。
より細かく言うと、膨大な関連資料をいただいたときに、その中からできるだけ早く必要な情報を見つけ出す能力です。
資料はpdfやwordのことが多いので、例えば表記が分からない単語を調べるだけであれば単語検索で拾えますが、時々資料の内容そのものを把握する必要が出てくることがあります。
しかし多くの場合、提供される資料が多いからといって単価は上がりませんから、資料をきちんと読めば読むほど費やす時間が増え、作業時間単価は下がります。

フォーマルな言い回しへの書き換えも大切

そしてもう1つ。くだけた話し言葉を、ある程度フォーマルな正しい日本語に整える能力。
つまりは言い換えのバリエーションを多く持っておくということです。
おそらくケバ取りであればデフォルトで「い抜き・ら抜き・さ入れ・を入れ・倒置の修正」を求められるとは思いますが、この他に「くだけた話し言葉をある程度フォーマルな日本語に整える」これが求められる案件があるのです。
イメージが難しいかもしれませんが、例えば堅そうな名前の会議なのに、随分くだけた(おっさん同士の飲み会の会話か!?というぐらいの)発言が多く、それでいて議事録を作成する場合など。

私は個人的にこの作業が大好きで、自分なりの整え方の定石みたいなものが確立されていくのが、たまらなく楽しいです。変態ですね。笑
どうしたら発言者の意図したところを損ねず、それでいてくだけた印象を与えない言葉になるだろう??ということを考える。本来文字起こしに作業者の個性は見えないほうがいいのでしょうが、どうしても作業者の思考や嗜好が表れる部分で、裏を返せば腕の見せどころです。

分かったこと5 ビジネスとしての文字起こし・自分なりの方向性

月給1万でも、仕事が月に1回でも、自らが事業主のビジネスであるという自覚

在宅ワークであっても、自らが個人事業主で、報酬と引き換えに仕事を提供している以上、立派なビジネスです。
ビジネスということは、自らの事業はどのような需要を満たすものになるべきか、もっと言えば『経営戦略』を考えねばなりません。

どんな需要を満たすための仕事をするか。

個人的には
「タイピングが早いです! 納品が早いです! 安いです! 納期厳守! 経験豊富です!」
よりは

「基本的には記者ハンドブックの表記に従います。資料を豊富にいただければ全て目を通し、これらにのっとって表記いたします。
情報検索も得意なので、なるべく不明な語はないようにし、表記に疑問があれば納品時にご連絡します。
書き起こし後の用途をお知らせいただければ、それに合わせて書き起こします。
その他、ご希望がありましたらお知らせください。」とでも言ってもらったほうが信頼できる気がします。

個人的には、質のいいものとそれに応じた対価のギブアンドテイクの中にいたい

個人的な普段の生活でも、内容が優れているものに見合う対価が高いのは当然だろうと思っているので、自分もそういうものを提供する側になれたらと思っています。
自分が頼む側でも、そういうものを求めます。
(誤解のないように言っておくと、その反対で対価の安いものには必要以上のものは求めません。品質管理のいい加減なものにはそもそも寄りつかないように注意しています。)
きちんと見る目があって、価値を認めてくれて、それにふさわしい対価をいただける。そういうギブアンドテイクができる人とお付き合いしたいものです。

でも需要はいろいろあるので供給もいろいろあっていいと思う

もちろん、とにかく早くて安いのが優先、品質を見極めるつもりもない、というような需要もあると思うので、そういう需要を満たすビジネスモデルも成り立つのだろうと思いますし、それらに優劣はありません。
ただ、自分はそちらは目指さないことに決めました。その方針を固めるに至った1年目でした。

2年目突入にあたって(個人的思い出です)

どうしようもない先輩が1回だけいいことを言った話

大学生の頃に5年半、同じアルバイトをしていました。
1年目はやることの全てが初めてで、毎度毎度四苦八苦。するとある日、私がしんどそうに見えたのか、すぐにやめてしまいそうに見えたのか分かりませんが、一緒に仕事をした先輩に「2年目になると不思議と仕事がうまく回るようになるから、大丈夫」と言われました。

それを信じて2年目に突入しました。すると本当に去年の苦労が嘘のように、仕事がうまく回せるようになったのです。新しい仕事をするにも、なぜか前ほど苦労しなくなりました。

そして結局トータルで5年半、国試3カ月前まで働きました。やめるときにはその支社のトップの人に「歯医者として働かないなら、卒後うちで勤務しない?○○のポジションあけておくからさ」と、割と本気ともとれるお声も掛けていただきました。
結局そこには就職しませんでしたが。

…ここで「その先輩のことは今でも尊敬している」とでも締めれば格好が付くのでしょうが、実はそれ以外の言動はどうしようもない感じで苦手な先輩でした。ごめんなさい。

でも、文字起こしの仕事1年目を過ごす中でも「2年目になると不思議と仕事がうまく回るようになる」を時々思い出して、無事1年間続けることができました。先輩、そこだけありがとう。

2年目も精進します

2年目はもう少し余裕を持って、もう少しクライアント様の意図をくみ取った書き起こしができるように、いろいろ工夫して精進します。おわり。

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